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過ぎし日の思い出:吉川 泰司

最終更新日:2016年4月1日

 徳島市川内町 吉川 泰司

 戦争。国同士で血の出る争い。罪なき人命を容赦なく奪っていく。このような悲惨さを見ることのない平温な世の中が永遠に続くことを願うものです。私の軍隊生活で体験した実情を記載しますので、参考にし、協賛をいただければ幸です。その当時の事故に遭遇された故人の霊に、謹んで哀悼の意を捧げます。
 思い出は、去る六十五年前の出来事です。徳島市蔵本町、現在の徳島大学病院・県立中央病院の場所に、軍の中部第六十二部隊があり、国土防衛と軍事訓練を行う機関がありました。私は部隊内の通信中隊に配属しておりました。当時、部隊南方の、眉山山頂に軍施設と近郷の住民を守る監視所(下士官ほか兵士数名が常駐、重機関銃を装備した部所)がありました。昭和二十年六月(日時不明)時点で、同施設に部隊本部との連絡用通信網が構成されていました。
 時に電話が通信不能となったため復旧に従事する命令を受け、助手兵一名を引率し修理用機材を携行して、部隊表門の衛兵所で司令に任務命令書を呈示し、同所を出ようとしたそのとき、近所のA様が所内に居ました。司令の許可をもらい、少しの時間、近況や任務の重要さ、私の経験等を語り合い、気を付けて任務につくことを励まし合って別れ、私は電話回線復旧に眉山へ登りました。「ありがとう」と凛々しくされた挙手の礼は、今も脳裏に浮びます。途中、部隊本部と連絡をとりつつ監視所に着き、所長の下士官に私の任務を申告し、作業にかかりました。原因は電話機の送話器内でねじがゆるみ、接点不良で通話不能になっていました。部隊本部との連絡が回復しました。
 その数分後です。見張り兵が北方讃岐山脈上空に飛行機一機を発見。「B29爆撃機だ。」直ちに本部に通報したと同時に轟音が響く。何ともいえないキツイ。、数分くらいしてドン、ドカンと二発の地響き。所内の兵士と共に山腹の熊笹の茂みに頭を突っ込むこと数分間。顔を出し下方を見ると部隊上空は黒煙が上がり、山頂まで砂ぼこりが舞い上がってきました。司令ほか兵士達は「部隊は全壊だ。もうだめか。」と、各々顔を見合わせ語り合う。
 約二十分は過ぎたであろう。黒煙も薄れて淡くなると兵舎がボーと浮かび出た。部隊本部には電話が通じない。本部が被害を受けたためだ。司令は兵士を二名、部隊本部に急行させる。私達も一緒に下山する。部隊近くまで来ると近所の人々、消防、警察、病院関係者でゴッタ返し、部隊の被服庫、作業所、陸軍病院と部隊本部、将校集会所、衛兵所、営倉の一部が被害を受けていた。部隊北側(現在の蔵本町交番から西へ、消防署に通じた道路沿い)に幅約一メートル余りの堀があり、部隊側は「ジヤキチ」の囲いが植え付けてあり、隊内には松や樹木を植えて建物をぼかしていたと思います。現在の中央病院入口付近から衛門に至る隊内の樹々、特に松の枝が爆風で吹き飛び、その枝に、黒く焼け焦げた兵士達の被服や身体の一部分、ゆれる皮膚片が飛ばされて点々と架かった光影。目を伏せ感無量の時を過ごしました。
 当日、部隊の衛兵所前で爆弾が炸裂し、その爆風で衛舎を直撃され、司令ほか勤務者全員が被害を受けられた。その中にA様が。お気の毒な戦死と知り、何ともいえないただ一瞬の出来事を推測しました。別の立硝場所で任務に就いていれば、難を免れていたのではと痛切に思い、胸をつまらせました。当人と話し合って約一時間余り後の出来事でした。もう少し世間話もしておけばと思い、残念です。
 昭和、平成と変革した今日。昔をしのぶ旧部隊兵舎や広い練兵場は消え去り、想像もしなかった壮大な建築物、徳島大学病院や中央病院ができ、周囲の溝堀も区画をした道路に。付近には官公署、広大な公園、グランド等がつくられ、春は眉山の桜。徳島大学病院の正門が旧部隊の表門で、その右側に衛兵詰所がありました。部隊に出入りする人達を確認し、隊全体の安全を守る任務に就かれ、故人となられた兵士の皆さんがいつも、往く人々の無事を見守っていられると思います。

 合掌

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