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戦争ほどみじめなものはない:後藤田 富美子

最終更新日:2016年4月1日

 徳島市上助任町 後藤田 富美子

 女学校二年生(現在の中学校二年生)の六月二十三日、秋田町の爆撃跡を見て中屋敷(富田橋二丁目)の自分の家に帰ってみると、二階建ての家が玄関の方へ大きく傾いていて、隣、裏と四、五軒の家がめちゃくちゃになっている。
 警防団の人達が大勢で片付けている。けが人は富田小学校(当時は国民学校)に運ばれているとのことに駆けつけてみたが、母も弟達も妹もうちの家族は誰もいない。
 ここに居なかったら富田浜の本願寺だとのこと。行ってみると、広間に三十ぐらい、布か、むしろのようなものをかぶせて死者を並べてある。その間をお坊さんが読経しながら歩いている。
 一つずつかぶせてあるものをめくって家族をさがしたがいない。お坊さんが「もう一度さがしてごらん。」と言った。ものすごくこわがりであった私だが、全く冷静な気持ちでもう一度、手や足の千切れたような遺体を一人一人確認していったがいない。
 負傷者は隣の若林病院にいるとのことで、急いで行った。けが人の名前が出ている。重傷者のところに母の名前を見つけた途端、私は動けなくなった。看護婦さんに「こちらですよ。」と言われても歩き出せない。再度うながされてやっと歩き出し、病室の前に立つと、ベッドの上から元気な声で母が「富美子」と呼んだ。どんなにホッとしたことか。二才の妹も重傷で頭をぐるぐるに包帯で巻かれ横にいた。(比較的軽傷だった弟二人は郵便局の診療所でお世話になり、大空襲の前に祖谷に行っていた。)
 七月三日の午後、「毎日空襲があるのに、歩く稽古をしておかないと。」と言ってくれた人がいたが、母は痛い痛いと言って起きあがることもできなかった。その夜、大空襲があったのだ。
 「富美子、富美子」と叫ぶ母の声に目を覚ました私は、妹を抱いて廊下に立っている母を見て飛び起きた。母から妹を抱こうとして私は貴重品の入った雑のうを思い出し、「あっ、カバン。」と言って取りに入ろうとしたが、母が「そんなものはもういい。」と叫んだので妹を受け取って防空壕へ急いだ。すでに部屋の柱は燃えていた。二人とも裸足だったと思うけれど記憶にない。
 「ここも危ない。」と誰かの声に皆が壕から出た。防火用水の水を警防団の人がバケツでかけてくれる。両側が燃えさかる中を、母をうながして両国橋を渡り新町川北岸の川の中に一晩中つかっていた。朝になって艦載機が低空でバリバリバリーと機銃掃射してきた。
 ここから新町小学校(幼稚園かも知れない)の講堂に避難したが、そこまでの間の町の状態は全く白紙で何も脳裏に残っていない。教室に黒こげの遺体がつみあげられていた。
 軍医さんがけが人の処置に来た。私も妹を抱いて前に座ったら、妹の頭の傷を見て、三センチ幅五ミリほど厚みのある頭の皮膚をハサミで切り取ろうとした。私はとっさに軍医さんの手を振り払って「やめて下さい。」と叫んだ。軍医さんもあきらめて皮膚を持ち上げて消毒した。妹は火がついたように泣いた。それから半年くらいは、飛行機の音がすると、妹はギャーと泣き叫んで頭をかかえて伏せていた。
 そこへ大阪から応援の祖母がたどりついた。祖母と一緒に父の里の祖谷へ行く。祖母が傷によくきく医者がいることを知っていて、貞光か穴吹かで下車して診てもらい薬をもらう。泊めてくれる所がなくて駅の待合室で寝て朝一番の汽車を待った。七月初旬の夏とは言え、夜は冷えて寒かった。そこへ軍服を着た父が私に毛布をかけてくれた。「あっ、お父さん。」と目を開けるとそれは夢だった。父は家が爆弾でやられる数日前に出征していた。
 戦争ほどみじめなものはない。

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