萌葱糸威二枚胴具足 唐冠形兜付(もえぎいとおどし にまいどう ぐそく とうかんなりかぶと つき)

更新日:2019年6月25日

萌葱糸威二枚胴具足(もえぎいとおどしにまいどうぐそく)の画像(蜂須賀吉武〈はちすかよしたけ〉具足)

一領
5代藩主蜂須賀綱矩嫡子吉武所用
胴前高34.0 cm 胸廻93.5
江戸時代中期
   

 徳島藩第5代藩主である蜂須賀綱矩(つなのり)の嫡子・吉武(よしたけ)(1692~1725)が着用した甲冑。総体を萌葱糸で毛引に威す小型の具足で、左脇を蝶番で繋いだ二枚胴となっている。射向下には鼻紙袋が備えられており、金物の鋲頭には蜂須賀家の「丸に左万字紋」があしらわれている。佩楯は、藍地金襴で瑞雲と龍の意匠を描く、小袴仕立ての伊予佩楯である。
 張懸黒漆塗の兜は、中国明朝の廷臣が用いた冠を模す「唐冠形(とうかんなり)」で、纓(えい)(冠の背面に付ける装飾具)を象った長寸の脇立が目を引く。蜂須賀家では、唐冠形兜を吉例の武具とする伝統があり、当主甲冑に好んで採用された。これは、大坂の陣で初代藩主・至鎮(よししげ)が同形の兜を用い、抜群の武功を立てた子地に由来している。
 蜂須賀吉武は綱矩の次男で、夭折した兄にかわり嫡子となる。将軍・徳川綱吉の御前で元服して一字を拝領し、次期藩主として期待されていたが、享保10年(1725)に34歳の若さで病没した。和歌の才能に秀で、その死後には遺歌集『木葉集』が編まれている。
 
 
『鐡華繚乱―ものゝふの美』,2019,p56.75(画像は別図録)

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