平成28年度 徳島市民病院 病院指標

　血液がんである悪性リンパ腫は、人口１０万人あたり年間約１０人発症しており、近年増加傾向にあります。発症の多くは非ホジキンリンパ腫であり、リツキサン治療を行うB細胞性リンパ腫が約８０％を占めるとされています。当院では臨床症状や病歴、検査、画像所見等による、速やかな総合的診断を心がけています。診断後は速やかに、化学療法や放射線療法などの集学的治療を行います。
　高血圧や糖尿病といった冠動脈硬化因子があり、虚血性心疾患が疑われる症例については、心臓カテーテル検査を施行しています。治療を要する冠動脈狭窄があれば心臓カテーテル治療を行います。
　肺炎で亡くなる方の９割は７５歳以上の高齢者であり、その中の７割は誤嚥性肺炎が原因といわれています、誤嚥とは、加齢や脳梗塞によって嚥下機能が低下し、声門を超えて食物や唾液が気道に入り込むことです。当院では誤嚥性肺炎の患者さんに、内科医による適切な抗菌薬治療を施行しつつ、耳鼻咽喉科医による嚥下機能評価を行います。言語聴覚士による嚥下リハビリや、胃瘻の造設など、患者さんの状態にあわせた治療法が選択できます。
　胆管に生じる悪性腫瘍や結石で胆管が狭くなったり、胆汁の流れが悪くなったりすると、発熱や黄疸が出現します。胆管炎を起こすと、細菌が血液中に入り、敗血症に陥る危険があります。このような場合内視鏡を用いて胆管の出口である十二指腸乳頭からチューブを挿入し、胆汁が流れる道を確保します。さらに結石の場合はチューブ挿入で炎症が落ち着いた後に、乳頭を切開したり拡張したりしてから、結石を十二指腸内へ排石させる処置を行います。

　当院外科では、肺・縦隔・乳腺・甲状腺・肝胆膵・胃・大腸・肛門等の良性と悪性疾患をいずれに対しても幅広く対応しています。疾患別の年間症例数は、肺94、乳腺126、甲状腺98、胆道126、肝臓34、膵臓12、胃40、結腸・直腸78、肛門29、虫垂炎65、ヘルニア101、腹膜炎13、等です。また、乳腺や消化管等の癌では手術と共に根治を目指すための化学療法も積極的に行っています。再発進行癌では化学療法や放射線治療と共に、癌性疼痛や治療に伴うさまざまな心配事や不安を改善するために緩和ケアチームと連携して治療に当たります。また救急外来にも対応し、夜間や休日などの救急手術にも可能な限り対応しています。

　当院は、徳島県で最初に脳神経外科が開設された病院であり、古い歴史をもちます。脳腫瘍と脳血管障害に対する外科治療を主体に扱っており、脳腫瘍･脳動脈瘤などの、メジャーと呼ばれている手術の割合が高いのが特色のひとつです。
　最近では、脳動脈瘤のコイル塞栓術、頭蓋外内頚動脈高度狭窄に対して、ステントで狭窄部を広げるCASの手術も多くなっています。

　2012年4月より脊椎・人工関節センターを立ち上げ、脊椎および股関節・膝関節を中心とした関節疾患に対し、確実な診断とナビゲーションシステムを取り入れた成績の良い手術を行い、患者さんの生活の質の向上を図ることに努めています。　
　また、外傷においては骨粗鬆症を有する高齢者の大腿骨近位骨折を中心に、綿密な病診連携を取りながら、安心安全かつ可及的早期に手術を行い、早期離床や歩行獲得に寄与できるように積極的に協力しています。

　当院小児科では新生児及び一般の小児疾患に対応し、日本小児科学会専門医研修施設にも認定されています。
　新生児医療では、NICU6床、GCU13床の地域周産期母子医療センターを有し、日本周産期・新生児医学会の新生児専門医暫定研修施設にも認定されています。主に在胎28日以降の早産低出生体重児や新生児仮死及び新生児呼吸不全、先天異常等、様々な疾病を持つ赤ちゃんが健やかに成長されることを願い、24時間365日体制で行っています。
　また、一般小児疾患では主に呼吸器や消化器などの感染症をはじめ、けいれん性疾患、免疫アレルギー疾患など多岐にわたる小児疾患の入院診療を行っています。また、重症例についてはHCU病棟にて人工呼吸器等の集学的治療にも対応しています。

　当院には婦人科腫瘍専門医がおり、悪性腫瘍に対して手術、化学療法、放射線治療を用いた専門的治療を行っています。体癌に対する腹腔鏡下手術の認定施設であり、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの腹腔鏡下手術も多数行っています。また周産期医療専門医もおり、合併症などのリスクのある妊娠を管理しています。新生児集中治療室（NICU）もあり、赤ちゃんは出生直後から専門医の治療を受けることができます。

　鼻がつまったり、ニオイが分かりづらくなったりする副鼻腔炎、熱やノドの痛みが急に起こったり、繰り返したりして学校や仕事を休む咽頭炎や扁桃炎、急にめまいを生じる前庭機能障害や急に聞こえなくなる突発性難聴など、日常生活の質に関わる疾患で入院治療を受けられる患者さんが多くなっています。

　帯状疱疹症例が多く、次いで薬疹・中毒疹、急性膿皮症などが挙げられます。帯状疱疹については汎発疹を伴うものやRamsay-Hunt症候群を合併するものなど、重症例の入院が増加傾向です。前年度まで常勤医が不在だった影響で総患者数が少ないですが、以後徐々に増加しています。

　最も多いのは白内障手術ですが、DPC対象症例ではないため、上記の表には出てきません。また、網膜硝子体疾患に関して徳島大学病院と連携をとり治療にあたっております。医師１名で行っているため、多数の患者さんには対応しきれない場合もありますが、診療効率をあげ、より多くの患者さんに満足度の高い治療を提供し、地域医療に貢献してまいりたいと考えております。

　腎尿管結石の主な治療として、内視鏡を尿道を通じて尿管、腎盂にファイバースコープを挿入して直接、結石を観察しレーザーなどで細かく破砕後、バスケットカテーテル（結石を捕獲する器具）を用いて結石を体外に取り出す方法（TUL）があります。ほとんどの例で全身麻酔下に行われており、約3日の入院を要します。
　表在性の膀胱癌には経尿道的膀胱腫瘍切除術（内視鏡手術）や膀胱内薬物注入療法を行っています。筋層浸潤性膀胱癌に対しては膀胱全摘術が必要ですが、高齢者や体力が低下している例、根治手術が不可能な例では内視鏡的な切除術と抗癌剤、放射線療法を併用する集学的治療が行われます。また、転移のある膀胱癌では抗癌剤投与が主な治療となります。
　水腎症は腫瘍や結石、尿管狭窄症などが原因で尿を膀胱へ送る働きが障害され腎臓が腫れた状態です。これに対して尿管ステント留置や経皮的腎瘻カテーテル留置などで治療します。原疾患の根治治療が可能な例では後日、手術などが行われます。

　大腸癌はごく一部のケースを除き、大腸ポリープ (腺腫) から発生することが分かっています。腺腫を悪性化する前に切除することで大腸癌は予防可能です。通常の内視鏡検査と同様に大腸内視鏡検査を行い、ポリープの根元にスネアと呼ばれるワイヤーをかけて、高周波電流で焼き切ります。出血や穿孔の有無を確認するため通常1泊入院で行います。苦痛なく処置が行えるよう心がけています。
　胆管に生じる悪性腫瘍や結石で胆管が狭くなったり、胆汁の流れが悪くなったりすると、発熱や黄疸が出現します。胆管炎を起こすと、細菌が血液中に入り、敗血症に陥る危険があります。このような場合内視鏡を用いて胆管の出口である十二指腸乳頭からチューブを挿入し、胆汁が流れる道を確保する方法です。鎮静剤を使用して苦痛なく処置ができるようにしています。
　急速に多量の消化管出血が起こった場合血圧低下（ショック，循環不全）を起こし、生命の危険に至る場合があります。点滴や輸血などにより全身状態を安定させると同時に出血の原因を推定し，血圧や呼吸が落ち着いたら緊急内視鏡による診断と止血処置を行います。出血性胃十二指腸潰瘍や食道静脈瘤破裂、大腸憩室出血に対する止血術などがあります。
　循環器内科では労作性狭心症等の虚血性心疾患に対する血行再建術として、経皮的冠動脈ステント留置術を行っています。手術は血管内超音波（IVUS）や光干渉断層法（OCT）を用いて狭窄病変や血管内部を詳細に評価し、より安全で確実な手技を目指しています。

　腹腔鏡下胆嚢摘出術は胆嚢結石が外科で扱う疾患の内最も多いものの一つであることより手術症例も多くなっています。
鼠径ヘルニアも同様に多い疾患ですが、当院では腹腔鏡での手術を積極的に行っています。
　乳癌治療は部分切除が最も一般的な治療です。乳癌の治療には様々な職種のケアが必要で医師だけでなく徳島県で唯一の認定看護師や臨床心理士、緩和ケアも充実しています。
　腹腔鏡下の虫垂切除は緊急手術として最も多い手術です。
　腹腔鏡下の結腸悪性腫瘍切除は、大腸癌に対する手術で腹腔鏡下に行われるのが一般的になっています。
　甲状腺癌は当院の得意分野で内視鏡下手術も積極的に行っています。

　高齢化に伴い急性期脳血管障害を取り扱う機会が多くなっています。当院としては、急性期脳血管障害に対する診断、治療の向上を目指し努力しています。
また脳梗塞に対して、t-PAを使用しての超急性期治療も行っています。

　2012年4月より脊椎・人工関節センターを立ち上げ、脊椎および股関節・膝関節を中心とした関節疾患に対し確実な診断とナビゲーションシステムを取り入れた成績の良い手術を行い、患者さんの生活の質の向上を図ることに努めています。　
　また、外傷においても綿密な病診連携を取りながら、安心安全かつ可及的早期に確実な手術を心掛け、早期離床や歩行獲得に寄与できるように積極的に協力しています。

　当院には日本周産期・新生児医学会の新生児専門医暫定研修指定施設にも認定されているNICU6床、GCU13床を有する地域周産期母子医療センターが設置・運用されています。
　小児科分野では、主に在胎28週以降の早産低出生体重児や胎児機能不全児等の分娩（緊急帝王切開を含む）の立ち会いや新生児仮死及び新生児呼吸不全、先天異常等、様々な疾病に対応しています。当センターでは、すべての赤ちゃんが将来にわたり健やかに成長されることを願い、24時間365日体制で地域の新生児医療を提供しています。

　2016年4月に婦人科腫瘍専門医が着任し悪性腫瘍の手術件数が著明に増加しています。また子宮頸癌の前癌病巣に対してLEEP切除+レーザー蒸散を用いて子宮をほぼそのまま温存する治療を行っています。腹腔鏡下手術の技術認定医も在籍しており、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの腹腔鏡下手術も多数行っています。また周産期医療については新生児集中治療室（NICU）を擁し、本県の周産期医療の中心的役割を果たしています。

　副鼻腔炎手術に対しては全例でナビゲーションシステムを用いて安全で確実な手術を心がけています。口蓋扁桃手術では疼痛や出血の危険性が高く日常生活に復帰しにくい期間は入院していただいています。喉頭に対する手術では、呼吸の安全を確認し退院していただいています。

　当科は外来診察室で手術対応することが多く、また形成外科でも皮膚手術を行っていることもあり、手術室における手術件数は少なめです。
外来での手術内容としては皮膚・皮下腫瘍の摘出や皮下膿瘍、褥瘡などの切開・デブリードマン、陥入爪手術などが多くを占めています。

　医師１名で白内障手術を中心に行っており、いわゆる総合病院の眼科として、他科疾患を合併した症例や全身状態の管理が必要な患者さんに対して、他科と連携をとり治療にあたっております。

　尿路結石には主に内視鏡（レーザー砕石術）を使った治療を行っています。入院期間は約３日。
　表在性の膀胱癌には経尿道的腫瘍切除術（内視鏡手術）や膀胱内薬物注入療法を行っています。
　尿管ステントは腫瘍や結石、尿管狭窄症など尿管の尿を膀胱へ送る働き障害に対し腎盂までに柔らかい管を留置することで尿の流れを改善させる方法です。
　前立腺肥大症に対しては、尿道から内視鏡を挿入し前立腺の肥大した部分を切除する手術（TUR-P）を行っています。
　慢性腎不全患者さんで継続して血液透析療法が必要な場合は、主に前腕部に動脈と静脈を吻合する手術（内シャント術）を行います。