第13回徳島市「街づくりデザイン賞」の概要
最終更新日:2016年4月1日
第13回徳島市「街づくりデザイン賞」8件が決定しました。
ご推薦いただいた皆様、ありがとうございました。
第13回徳島市「街づくりデザイン賞」の概要と各受賞建築物等について、ご紹介します。
第13回徳島市「街づくりデザイン賞」について
1 主旨
近年、従来の街づくりに加え、うるおい、やすらぎ、ゆとりなどの精神的文化的豊かさを配慮した街づくりがもとめられています。
徳島市では、優れた計画により造られた建築物等が、都市の美化、都市環境の向上に大きな役割を果たしていることから、その奨励と顕彰をはかるため「街づくりデザイン賞」を昭和60年から実施しています。
2 対象となる建築物等
平成20年4月以降(ただし、生け垣等で長い期間の育成・維持において生まれているデザインについては、完成時期は問いません。)に、徳島市内で完成(増築、改築、修景、模様替えを含む)されたもので、デザイン的に優れ、街づくりに貢献があったと思われる建築物等(建築物、彫刻、モニュメント、生け垣、広場、前庭、サイン、看板、道路など)とそれらを生かした街並みを対象としています。
推薦の対象となる建築物等
- 建築物等で色彩、形態などが周囲の景観と調和しているもの
- 敷地内に緑地や広場などのオープンスペースを適切に配置したもの
- 山、河川などの自然の景観要素をうまく活用しているもの
- 壁画、彫刻、モニュメントなどにより、文化的、芸術的環境を作っているもの
- 歴史的な街並みの景観を維持し、伝統的な雰囲気を継承しているもの
- サイン・看板などで、周辺の景観に配慮したもの
- 生け垣・前庭・既存木などを生かして修景し、街並みにうるおいをもたせたもの
- 魅力的な夜の景観を創りだしたもの
- 建物などをリフォームし、新たな魅力づくりをしたもの
- 地場の材料(杉、青石など)を使用し、徳島の風土を生かしたもの
3 推薦期間
平成23年8月1日から平成23年9月30日までの間
4 推薦数
- 推薦総数 71通
- 推薦物件数 56件(うち15件は重複及び対象外等)
住宅 18件
商業施設(店舗) 10件
共同住宅 1件
診療所 3件
病院 4件
寺院 1件
保育所 1件
事務所 2件
公共施設 2件
特別養護老人ホーム 1件
その他 13件
合計 56件
5 審査
とくしま まちのデザイン作法集(平成9年発行)により審査しています。
6 賞名
凛の佇み賞 KW邸
山すそのやすらぎ賞 KT邸
周辺環境配慮賞 mono株式会社 事務所併用作業場
ガラスのタペストリー賞 歯科医院 こころ歯科
緑とともに賞 とくぎんトモニプラザ
希望の丘に芽吹く賞 徳島大学 助任の丘
光のかけ橋賞 両国橋LEDアート『SORAとMIZU』
なごみのまちなみ賞 中常三島の町並み
7 表彰
受賞された建築物等の建築主、設計者、施工者の方々に、表彰状と銘板または盾を贈ります。
第13回徳島市「街づくりデザイン賞」表彰式は、平成24年2月24日に市役所で行いました。
8 選考委員会委員(委員長以下五十音順、敬称略)
委員長 林 茂樹 都市環境デザイン会議(建築)
委員 岡本 多英子 グラフィックデザイナー
委員 喜多 順三 NPO法人コモンズ代表理事(建築)
委員 坂野 美恵子 四国大学教授(グラフィックデザイン)
委員 佐藤 幸好 徳島県建築士会会長(建築)
委員 富山 圭子 コピーライター
委員 松永 勉 徳島県美術家協会理事(芸術)
9 広報予定等
広報とくしま 平成24年3月15日号
街づくりデザイン賞総評
街づくりデザイン賞選考委員会 委員長 林 茂樹
この賞は昭和60年に始まり、今回で13回目となります。71件の推薦があり、現地審査を行って選考しましが、優劣付けがたい物件ばかりで選ぶのに苦労しました。
前回にも感じたことですが、住宅街の風景が昔とは変わってきているように思います。昔よく目にした門や塀は姿を消しつつあり、それに替わって、前庭やオープンスペースが前面道路に開放的に配置されているのをしばしば見かけるようになりました。それは駐車スペースにもかかわらず、積極的に植栽したり、活用することで、ともすれば閉鎖的だった町並み景観が開かれたものへと一変しています。
推薦された物件(住宅や事務所、診療所など)の多くは、そのような外構となっていました。受賞した物件はいずれも、街への配慮やしつらえの美しさが評価されたものです。
今回、特筆すべきことは、何も手を加えていない昔ながらの町並みが選ばれたことでしょう。建ち並んだ家々はそれぞれが囲障に植栽を用いて、あるいは塀の内側にある庭の植木を上手く利用して、緑豊かな心地よい町並みを形成しています。
個々が街の景観に配慮すれば、それが連なり線となり、そして面となって、美しい町並みを創っていくことになります。そこに暮らし、街に関わる人々の心を一つ一つ重ね合わせることで、日本の美しい風景を大切に守り、再び取り戻せるのではないでしょうか。
凛の佇み賞 ~KW邸~
【審査評】
オープンな車庫と並ぶ前庭は、まるで道行く人のために設けられたような雰囲気です。来客用の駐車スペースとも思えるこの前庭部分は、それを思わせないところが見事で、また砂利を敷き詰めた緊張感を漂わせる美しさは、完成度も高く、龍安寺の石庭を連想させます。
建物の落ち着いた色調や高さを低く抑えたその姿は、町並みへの配慮や前庭との調和を保ち、威圧感を与えず、凜として佇む品の良さが感じられます。
- 設計 有限会社富田建築設計室
- 施工 有限会社新井建設
山すそのやすらぎ賞 ~KT邸~
【審査評】
山麓に建つこの建物は、すぐ裏に山が迫り、まさに自然と隣り合わせの環境の中、静ひつ感が漂い、安らぎを覚える佇まいです。シンプルな外観を覆う真っ黒な焼杉板が、木の特質を際立たせるとともに、素材の魅力を存分に発揮して、周囲に違和感なくとけ込んでいます。
道路に面して、小石の敷かれた広いオープンスペースが設けられ、その中の植栽が町並みにアクセント的要素として成り立っています。
この建物は木をふんだんに使用するなど、素材を活かした設計がなされています。それは建築主の木に対するこだわりを強く反映したものであり、自然から与えられたものを自然へ戻す循環の考え方です。その意味からもこの場所にふさわしいものであり、素材の持つ暖かさと周囲の景観が良く調和したものとなっています。
- 設計 釜床 美也子
- 施工 岡崎工務店
ガラスのタペストリー賞 ~歯科医院 こころ歯科~
- 所在地 新南福島1丁目
- 設計 有限会社開建築設計事務所
- 施工 株式会社アークホーム
【審査評】
眉山が遠くに見える新町川に面したこの建物は、前庭と駐車場が公園のように開放的で楽しいオープンスペースとなっています。パーティションの様に組み合わされたコンクリートと磨りガラスの塀が、植栽を美しく演出しています。ガラス張りの外観は透過を上手く利用し、室内からも見えるタペストリーを用いたアート的な表現により魅力を増し、青い空のキャンバスに白を基調とした外観は一見お洒落なギャラリーの様にも見えます。
前庭の芝生中には医院のマークを浮かび上がらせるなど、細部に遊び心が溢れ、道行く人々の目を楽しませているようです。今後は建物北面の植栽等にも期待します。
光のかけ橋賞 ~両国橋LEDアート『SORAとMIZU』~
- 作家 筑波大学人間総合科学研究科芸術系教授 逢坂 卓郎
【審査評】
LEDを使用した景観整備や地域イベントが活況ですが、さまざまな試みを経て、「とにかく使えば良い」から「いかに使うか」が問われる段階を迎えているように感じています。
そんな中、今回の受賞作はLEDの持つ「クリアな輝き」「明快な発色」などの特性を純粋に活かしつつ、スケール感のある作品として完成させた点が素晴らしいところです。さらに、サイバネティックアート(気温変化、街の音、橋の震動、宇宙線等の信号を受けて発光が変化)という最新の表現手法を用いると同時に、周囲の街あかり(水面に映り込む光のゆらぎを含め)に素直に溶け込む普遍的な美しさを保っている点も、公共的なアートとして大いに評価できます。
アートと日常、先進と普遍を結ぶ美しい光の橋。それは徳島市が「LEDが魅せるまち・とくしま」として輝く未来へのかけ橋でもあります。これからのより豊かで洗練されたLED活用に向けて、ひとつの方向性を示す事例と言えるでしょう。
周辺環境配慮賞 ~mono株式会社事務所併用作業場~
- 所在地 安宅1丁目
- 設計 伊原 貢
- 施工 株式会社坂本工務店
【審査評】
前面道路からセットバックした前庭は、緑化ブロックによる舗装と部分的な植栽で構成され、駐車スペースにもかかわらず、潤いのある場になっています。また、その前庭を囲むように、一見住まいと見間違えるような玄関部の表情と事務所部分やゴミ置き場を木製格子や木製壁で目隠しすることで、前庭全体が自然で柔らかな地域のオープンスペースとなっています。
このように、住宅地の中に建てられたこの建物は、事務所兼作業場という形態にもかかわらず、周辺環境を損なうことなく、さらにより良い環境を創造しようとする配慮が強く感じられます。
緑とともに賞 ~とくぎんトモニプラザ~
- 所在地 徳島町城内
- 建築主 徳島県青少年センターPFI株式会社
- 設計 株式会社石本建築事務所 大阪支所 有限会社中川建築デザイン室
- 施工 株式会社坂本工務店
【審査評】
とくぎんトモニプラザは2008年から2010年にかけて行われたリニューアル工事により、耐震補強と内部機能の一部が更新されるとともに、東側の一部が増築されました。通りに沿った増築部分には、ガラスのスクリーンと壁面緑化が施され、それまでの外部に閉ざされた白いコンクリートの箱が、緑の豊かな開かれた公共施設へと生まれ変わりました。
ストック活用の観点から、既存建物の耐震改修が進む中、建物自体の耐震性能の向上のみにとどまり、ブレースなどの補強材が建物の外壁に露出し、建物のデザインだけでなく、街の景観を損ねているケースが見受けられます。
この建物の場合、耐震性能を高めるだけでなく、公共建築としてのアクセシビリティの向上や、良好な街並み形成にも十分な配慮がなされており、これからの建物のリノベーションの優れたモデルとなっています。今後とも、壁面緑化が適切に維持され、潤いのあるまちづくりに貢献されることを期待します。
希望の丘に芽吹く賞 ~徳島大学 助任の丘~
- 所在地 南常三島町1丁目
- 設計 国立大学法人 徳島大学 施設マネジメント部
- 施設主 国立大学法人 徳島大学
【審査評】
かつて灰色の壁で覆われていた大学キャンパスは、学生と教員の提案により開放的な空間に生まれ変わりました。なだらかな丘には、芝生が敷き詰められ、その裾野には学生達が集えるスペースもあり、道路側の植栽が大きく成長することで新たな人の流れを生み出しそうです。
大学キャンパスといえば立ち入りにくい雰囲気がありましたが、外壁を低くし開放的にしたことで、地域住民も利用できる安らぎの空間が誕生しました。このような取り組みは、他大学にもよい影響を与える先導的な取り組みと言えます。
なごみのまちなみ賞 ~中常三島の町並み~
- 所在地 中常三島町2丁目
【審査評】
いつの間にか、都市部の住宅街で連続した緑を見ることが珍しくなってしまいました。中常三島の町並みは、緑が豊かでとても心地よく感じられます。通り沿いに手入れの行き届いた緑が連続し、建物のスケール感も統一された町並みが形成されているからでしょう。ここを歩くと、良質な町並み形成には、それを構成する個々の建物のあり方と、そこに住まう人達の意識の重要性を再認識することができます。
景観まちづくりを進めていくには、私達にとって最も身近な景観ともいえる住宅街の町並みは重要であり、そのモデルとして、この町並みはとても貴重なものです。通り沿いの一部には、駐車場等の空き地も見られますが、新たに建物が計画されるときには、既存の町並みづくりの作法に配慮した土地利用と建物造りが行われることを期待します。
この内容についての問い合わせ先
都市政策課 計画景観担当
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